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もう同僚に「AI に何をしてほしいですか」と聞くのはやめよう:職務リストから最初の AI タスクを見つける

ニーズ調査票を回収しても、空欄だったり、検収できる形で要件が書かれていなかったりすることが少なくありません。職務の棚卸しから始め、5つの条件で絞り込むことで、企業は AI Agent に任せる最初のタスクをより早く見つけられます。

AI導入人機協作

AI 導入の最初の週、多くの企業はまず各部門にニーズ調査票を配り、「AI に何をしてほしいか」を記入してもらいます。2週間後、回収した回答の半分は空欄で、残りの半分には「資料を整理してほしい」「レポートを自動作成してほしい」「顧客メールに返信してほしい」と書かれています。

これらの回答にニーズがないわけではありません。問題は、範囲が広すぎるうえ、具体性にも欠けることです。プロジェクト担当者が調査票を見ても、どこから着手すべきか判断できず、完成後にどう検収すればよいかもわかりません。

本当の問題は、質問の仕方にあることが少なくありません。

一見シンプルな質問に潜む3つの難題

「AI に何をしてほしいですか」という質問は自由度が高いように聞こえますが、実際には回答者に3つのことを一度に求めています。まず AI がどこまでできるのかを理解し、次に自分の業務を委託できる単位まで分解し、最後に効果とリスクを判断しなければなりません。

AI を実際に使ったことのない社員にとっては、最初の段階から答えるのが難しく、その後の2つについても当然うまく書けません。これは、機械設備の仕様をよく知らない人に、新しい生産ラインの設計要件をいきなり提示してもらうようなものです。自分の仕事を熟知していても、それを実行可能で検収できる要件として表現できるとは限りません。

質問を変えれば、状況も変わります。「普段どのような仕事をしていますか」と聞けば、ほとんどの人が毎日、毎週、毎月繰り返している業務から挙げられます。議論の焦点も、想像上の新機能ではなく、会社が現在実際に人件費と工数をかけ、納期にも影響している業務へと戻ります。その仕事を AI ができるか、どこまで任せるのが適切かは、次の段階で判断すればよいのです。

まず4つの項目で職務を明確にする

棚卸しは部門単位で行い、各社員に自分の職務を列挙してもらいます。最初から複雑な表を作る必要はありません。まずは次の4項目を把握します。

  • 職務内容:現在、この仕事をどのように行っているか。最初にどこからデータを取得し、完了後は誰に渡すか。
  • 実施頻度:毎日、毎週、毎月、または特定の事象が発生したときのみ行うのか。回数を数えられる場合は、その回数も記入する。
  • 1回あたりの所要時間:習熟者が通常どおり作業した場合の平均時間を、実態に即して記入する。
  • 利用人数:部門内で実際にこの業務を行う人数、または成果物を共同利用する人数。

この4項目のうち、最も書き方がずれやすいのが職務内容です。

たとえば「購買管理」「品質管理」だけでは、職能の名称にすぎず、仕事がどこから始まり、最終的に何を納品するのかがわかりません。より適切なのは、「未納の発注書をダウンロードし、期限超過分を抽出して、督促メールを送る」という書き方です。この一文だけで、データの取得元、処理内容、成果物が明確になります。

棚卸しの段階では、作業手順全体を残し、急いで分割する必要はありません。ヒアリングや評価の段階で、AI に任せるのが適切な部分と、引き続き人が担当すべき部分を判断します。

TURBOの5条件で最初のタスクを見つける

職務リストを作成したら、次に TURBO の5条件で絞り込みます。所要時間(Time-consuming)、利用人数(User-wide)、反復頻度(Repeat)、人と AI の協働の余地(Buffer)、プロセスの分解可能性(Operable)です。

初期段階では、ルールが明確で、入出力が固定されており、エラーが発生した際にすぐ判別できる業務を優先することをおすすめします。このようなタスクは対象範囲を定めやすく、検収方法も設計しやすいためです。

私たちが支援した企業では、最初から安定して実行できたタスクの多くが、帳票の認識、データ登録、照合といった業務に集中していました。理由は明快です。入力と出力がはっきりしており、間違いも見つけやすいからです。AI Agent がタスクを完了した後、ユーザーは結果が正しいかをすぐに判断でき、プロジェクトチームもどこを修正すべきか把握できます。

優れたリストから自然に生まれる3つの判断

購買部門を例に、職務リストのサンプルを示します(頻度と所要時間は参考値です。実際には各企業の状況に応じて記入してください)。

  • サプライヤーの見積書を集約し、通貨、支払条件、納期を統一したうえで比較表を作成する。月約12回、1回45~90分。この業務は AI Agent に適しています。データ項目が固定されているため、まず情報の抽出と差異の表示を任せ、価格交渉は引き続き人が担当できます。
  • サプライヤーの言語に合わせて納期督促メールを作成する。週約15回、1回8~15分。この業務はタスク化に適していますが、回答する納期と送信先は購買担当者が確認する必要があります。
  • 新規サプライヤーの製造能力と取引リスクを評価する。月約2回、1回2~4時間。AI は資料の整理を支援できますが、サプライヤー選定の判断は AI に任せません。
  • サプライヤーとの価格交渉や、部材不足への対応を調整する。週約4回。このような業務は、交渉、人間関係、現場での判断に大きく左右されるため、最初のタスクには含めません。

品質保証部門の職務リストにも、同様の分類が現れます。サプライヤーの材質証明書と購買仕様を照合する作業は AI に適しており、「一致」「相違あり」「要確認」の3種類の結果を出力すれば十分です。一方、不適合品を特別採用するかどうかの判断については、AI が過去の事例を整理して責任者の参考資料にすることはできますが、決定権は引き続き権限を持つ責任者に残します。

優れた職務リストには、本来「適している」「支援にのみ適している」「適していない」という3種類の判断が同時に含まれます。棚卸しの結果、すべての業務が AI に適しているとなった場合は、チームがタスクの範囲を広く捉えすぎていないか、見直す必要があります。

また、職務リストは開発リストではないことも忘れてはいけません。「見積書の集約」を例にすると、初期版では項目の抽出と差異表の作成だけを対象にできます。出力が安定してから過去の見積価格の検索機能を加え、価格交渉は一貫して人が判断します。タスクの範囲を明確に切り分けてこそ、チームは今回のバージョンでどこまで実現するのかを把握でき、検収も可能になります。

棚卸しの現場でよく直面する4つの抵抗

職務の棚卸しは一人ひとりの仕事内容に関わるため、推進時に抵抗が生じるのは珍しくありません。ここでは、私たちが現場でよく直面する4つの状況を紹介します。

1つ目は、所要時間を記入すると、後で人事評価に使われるのではないかという懸念です。

この懸念に対し、単に「評価には使いません」と伝えるだけでは不十分です。棚卸しを始める前に、その目的と閲覧権限を明確に説明する必要があります。棚卸し表はタスクの価値を試算し、改善前の基準値を設定するためだけに使用し、個人の順位付けには使いません。元のリストを閲覧できるのは部門責任者と導入チームに限定し、経営会議では部門別の集計結果だけを共有します。

一部の業務で所要時間を見積もるのが本当に難しい場合は、まず頻度と手順だけを棚卸しし、個人の所要時間は一時的に収集しない方法もあります。最初からすべての項目を埋めることにこだわるより、棚卸しを前に進める方が現実的です。

2つ目は、自分の仕事には特に書くことがないと思っているケースです。

熟練者は多くの判断をすでに常識として身につけているため、最終的に「定型業務」の4文字だけを書いてしまうことがあります。このとき「ほかに仕事はありませんか」と聞き続けても、通常はそれ以上の内容を引き出せません。ヒアリングでは、「先週はどのファイルを提出しましたか」「月末までに必ず終えなければならないことは何ですか」「休暇を取る際には、どの手順を引き継ぎますか」と質問を変えます。直近で処理したファイルを実際に開き、社員と一緒に入力と出力を分解する方法も有効です。

経験に基づく判断が必要な箇所では、熟練者がどのような原則に基づいて処理しているのか、さらに掘り下げて確認する必要があります。手間を惜しまず、自分の論理で社員のやり方を都合よく解釈してはいけません。私たちが支援した企業では、帳票認識、特殊な費用配分、勤務シフトのルールなど、一見単純に見えるタスクの裏に、多数の例外条件が隠れていました。こうしたノウハウは、一つずつ掘り下げて聞くことで初めて残せます。

3つ目は、棚卸しの結果が人員配置の見直しに使われることを管理職が懸念し、価値が低く、業務への影響も小さいタスクしか挙げようとしないケースです。

最初の棚卸しでは、目的が工数の改善にあり、構造化された業務を AI に分担させるためのもので、部門の順位付けは行わないことを明確にします。それでも管理職に懸念が残る場合は、まずモデル部門で実践例を示す方法があります。他の管理職が、これらの数値は人員を批判するためではなく、業務プロセスの改善に使われるものだと実際に確認できれば、その後の棚卸しは進めやすくなります。

4つ目は、ベテラン社員が仕事を書き出すと、自分が置き換えられてしまうのではないかと心配するケースです。

企業はベテラン社員を、知識の継承と指導を担う役割に位置づけることができます。ルールの策定、結果の検証、例外の判断を担当してもらうのです。説明する際には、次のように率直に伝えられます。「将来、すべての作業を人が直接行う必要はなくなるかもしれません。しかし会社には、AI Agent の作業結果を指示・検証できる経験豊富な人材が、これまで以上に必要です」

同時に、知識への貢献も評価対象に含める必要があります。ルールの整理や経験の継承を、ベテラン社員が追加で負担するだけの仕事にしてはいけません。会社が熟練者にノウハウの提供を求める一方で、それに見合う評価を与えなければ、どれほど優れた棚卸し方法でも推進するのは困難です。

最初の棚卸しを終えたとき、何を残すべきか

最初の棚卸しが完了した時点で、部門には3つの成果物が残っている必要があります。入力と出力を明確に記載した職務リスト、絞り込みを終えたタスク候補リスト、そして各業務の改善前の基準値です。

この3つがあれば、その後タスクを構築するときに、チームはどのように範囲を切り分けるべきか判断できます。効果を検証するときには、改善前の状況と比較できます。どのタスクを本稼働させる価値があるかを決める際にも、具体的な判断材料になります。

職務から始める利点は、AI が今後どのような新機能を生み出せるかを、最初から想像する必要がないことです。まず、目の前で実際に行っている仕事を明確にします。入力、処理方法、出力が次第に明らかになれば、AI Agent に任せるのに適した最初のタスクも自然と見えてきます。


本記事は、Intellicon Solutions の『Agent-Ready:台湾製造業 AI 活用白書』から抜粋したものです。白書には、購買部門と品質保証部門の職務リストの完全なサンプルに加え、12問の自己評価表が収録されており、10分以内に自社の現在の Agent-Ready 度を確認できます。

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